伝え役・結城貴暁の四角紙面 <2>
〜インターンシップ四方山話〜
文・結城 貴暁(ビスタワークス研究所・伝え役)

 私たちの夏の風物詩と言えば武者修行ですが、もうひとつの大事なイベントが大学生・専門学校生のインターンシップ。その歴史は古く、当社の前身となる人財開発室(ネッツトヨタ南国内)に端を発してから約20年の時が流れました。

 活動元年となった2000年度の内定者がこの私。当時の採用担当である大原から「まだ入社前やけど、大学3年生と一緒に勉強会するから来てみん?」との一報が。その勉強会こそが社史に刻まれるファーストインターンシップだったのですが、「ぜひ参加させてください!」と返すべきところを正直者の私は「すみません」と即答。なぜなら、直前に迫ったヨーロッパへの卒業旅行で頭がいっぱいだったからです(笑)

 貴重な機会を逃しましたが、数年後、再びチャンスが巡ってきます。同社を一旦退職しイギリスに留学。その後に再入社した私の初仕事がインターンシップの担当でした。運命的なものを感じ、意気込んで臨むものの不十分さを痛感することに。

 ひとつは私の会社理解の浅さ、そしてもうひとつは学生との見解の相違でした。これが深刻で「会社や業界について説明したい私VS自分探しをしたい学生」の対立となり、数日後には険悪な関係に。インターンシップを採用活動の一環としか考えていなかった私は、上から目線で学生に関わり、自分たち色に染めてやろうという嫌な社会人だったと思います。

 いい人を採用したい。から「地域の人財を育む」へ…、そんなプログラムを大原や小松が展開していたのですが、私だけが時代錯誤に陥っていたようです。ほろ苦いデビューでしたが、インターンシップの「やり方」ではなく「あり方」の大切さを学ぶ機会となりました。

 さて私にとって縁あるインターンシップですが、今その根幹が揺らぎつつあります。大学生のインターンシップへの参加率は72.8%と過去最高を記録(2018年度)。特に短期間のプログラムが人気を博し、実施企業数も年々増加傾向にあります。ここ数年で学生の売り手市場も相まって、「インターンシップ=採用(就職)活動の前哨戦」という認識が定着したのです。

 採用活動とインターンシップを連動させるのは自然の流れであり、体験した学生が企業理念や働き方に共感し、結果として入社意欲を高めるのは望ましいことだと思います。しかし私たちは、学生・企業・地域社会のより良い未来のためには、それ以上に大切なことがあると考えます。

 なぜネッツトヨタ南国が採用活動という枠組みを飛び越えたのか?それは、課題先進県である高知で自社だけが採用に成功し、理想の組織に近づいたとしても、地域が衰退し若者の県外流出に歯止めがかからないままでは意味がないということ。企業は「自社の繁栄」から「地域の発展」へ、学生は「自分がよければ」から「誰かのために」へと思考を広げ、それぞれが自ら使命や理想を思い描き、小さな変化が起きる。インターンシップはそんな舞台であるべきではないでしょうか。

 ビスタワークスが法人化した2010年から我々の使命として「インターンシップ研究会」を立ち上げ、企業や大学の担当者が一堂に会しての勉強会や、学生向けのセミナーなどを開催しています。近年では地道な活動が実を結んで企業の輪も広がり、学生との出逢いも増えつつあります。しかし、まだまだ道半ば。この研究会を活性化させるためにも、音頭を取る私たちが常に挑戦者でありたいと思っています。

 最後に少しだけ、当社のインターンシップを紹介します。4年前から私たちの事業に連動したプログラムとして、小学校での授業の実施や地元の木工玩具屋さんとの商品開発、インターンシップイベントの企画&運営などに取り組んできました。用意されているのは機会だけ、学生たちは自ら考えて行動しなければなりません。

 多様な経験ができる反面、主体性と調和力を発揮しなければ迷子になります。もちろん私たちはそんな学生の様子を見守るだけではありません。ときに寄り添い、ときに強く背中を押す。心通う本氣の人間関係こそが、彼ら彼女らの一歩に繋がると信じています。

 今夏も当社に入りたい人ではなく「経営者になりたい人、リーダーシップを磨きたい人、この指と~まれ!」という呼びかけで集まった個性豊かな4人の学生と濃密な6日間を過ごしました。今後も当社では就職活動とは一線を画したインターンシップを続けて参ります。これを読んでいるあなたのご子息、ご息女の挑戦も大歓迎(笑)。お待ちしてます!