悪戯な過当競争の中で心身を削るばかりの商いが横行するこの時代。「ちょっと待てよ」と一旦立ち止まり、自分たちの仕事の目的とするところは何なのか、今行っていることは目的と整合しているのかを深く問い、全体最適への変容の道を発見することが必要です。そこで、弊所では「うまくやる」ための知識・技術を短期で習得するための「研修会」ではなく、「善いことをする」ために日々の活動から知恵を得る学習力に重点を置き、参画者※1同士が切磋琢磨し研鑽する「学び合いの場(学習会)」をご提供しています。参画者自らが「考え、対話し、行動し、省察から学び(知恵)を得る」営みを体得し、それを組織全体に展開し、社員全員に押し広げること。それによってこそ、環境変化にしなやかに適応・進化する再起力(レジリエンス)が磨かれ、永続への道が開かれていくのです。
学習会にご参画いただく皆様には、ご自身の考え方、在り方を見つめ直し、その人生と正面から向き合い、未来を展望し、今を定めることを求めて参ります。しかしながら、現実のそれは容易ではなく、比較となる好敵手や共に精進する同志の存在、また模範となる具体的実践事例や先人の教え、その成功要因の本質を掴むこと。そしてなにより、考える※2精度を高めるためには幅広い教養と正しい手順での内観が求められます。
そのことから、考え、対話する素材として、賢人の残した哲学や学問、思想、また歴史的事象や心理学、社会科学、経営学などを織り交ぜてご紹介しながら進めております。受講者の関心事や価値観、学習様式などの多様性を克服するために、できるだけ幅広く学習素材を収集し、ご提供するように努めている所以です。
※1 参画:そこに居合わせる「参加」ではなく、意見を述べ合い、構造づくりに関わること。
※2 考える:自らの行動の変容を構想する営み。他者や過去のことを想起する「思う」と区別しています。
「考え方、考える力」が、個人や組織の成長の方向性と速度を決定するといっても過言ではないでしょう。しかし、「考える」という営みが具体的にはされておらず、漠然とした「思い巡らす」「あてはめる」の連続に終始して、自らの行動変容まで至らないことが多くあるものです。そこで、弊所の学習会では参画者同士の「対話」機会を多く持ちます。一人で考えることが自問自答、それを複数人で現象化したものが対話です。対話によって考える営みを可視化し、その過程を客観的に評価し、「考え方」を修養し、「考える力」を体得していきます。
深く対話するためには、言語や概念が明確に定義、共有されていることが必須となります。「社員満足」や「幸福」といった概念は経営にとって重要性の高いものであるにも関わらず、貸借対照表にある指標ほどには明確化されておらず、感覚的な認識のままで話し合うと的外れな議論や雑談となってしまうものです。そこで、弊所の学習会では映像資料や文献を初期の対話素材として用いることが少なからずあります。その多くにネッツトヨタ南国の実践事例を用いることはもちろん、他業種における卓越した実践事例や日本の商いの原点を描いた映像作品。また社会を賑わせている事件や出来事、日本や外国の歴史。そしてテレビ放送以降も長く話題となっている良質のドキュメンタリーなどに触れ、参画者による複数の視点、視野、視座から考察を述べ合います。それは、対話の中で考える力を鍛錬するだけでなく、非経済的経営重要課題にまつわる自社の経営現状をよく省察し、理想を敷衍し実現させる構想を立てていくことを狙いとしているものです※3。
※3 映像使用についての補足
弊所の学習会では「考える力」「対話する力」を磨き、環境変化への適応力を高めるお手伝いをすることを最重要視しています。そのためには、体験していただいた「学び合いの場」をそれぞれの組織に持ち帰り、再現していただくことが必要です。しかし、人間力、組織力を実践の中で高め続けることは容易ではなく、記憶を持ち帰り多数に即時伝達できる知識技術(ノウハウ)の世界と同じ発想で進められると必ず失敗に終わります。
ご参画いただいた皆様から、「持ち帰って振り返りたい」「この内容を自社に落とし込みたいが、社員に伝えることが難しい」という声を多数いただいてきた経緯から、学習会でお伝えしている弊所知財をデジタル媒体でご提供するようにし(「どう思う」シリーズは販売)、また、会員制の学習会においては研修実況を音声録音、写真撮影することを認可することでご利用いただきやすくしております。また、メディアを通じて報道されている社会問題など、各社が調達しやすい題材で学習会を構成する試みも進めて参りました。とくに映像資料は視聴覚を用いて情報を受け取ることができるところから、進行役(社内で展開を試みる方)の力量を補完し、効果的な学習の場を創ることができます。深い学びを得ることのできる優れた映像を一過性のものにせず、その叡智を共有して未来づくりの礎とすることも弊所の使命と考え、展開しているところです。